唎酒師への道(19)ー 製麹(麹造り)その④ ー

さて、今回こそ、麹造りの具体的工程の説明です!(笑)

まず、麹造りに要する時間ですが、唎酒師試験的には48時間程度と覚えておいてください。

しかし、実際のところは、普通酒用なのか、大吟醸酒用なのか?といった用途でも違いますし、蔵によっても違います。ですから、短い場合では40時間程度から、長い場合だと70時間近くかけて麹を造ることもあるのです。

試験対策としては、各工程の名称と順番、ザックリとした内容を覚えておけばOKで、蒸米の温度とか、各工程にかかる時間を暗記する必要はありません。それと、これも試験には関係ありませんが、各工程において、

普通酒と大吟醸酒など高級酒とで手法が異なる場合がある

ので、これは覚えておくと面白いですし蔵見学の時にも役立つと思います。

<工程① 引き込み>

蒸し終わって、放冷されたお米を麹室に運び込むことを「引き込み」と言います。放冷の段階で、米は、

予め目標としていた「温度と水分量」

に調整されています。この引き込み時の温度や水分量も使用目的(=どんな麹を造りたいか?)や、各蔵の考え方によって異なります。また、運び込む手法も、

普通酒はエアシューターを使うが、高級酒は蔵人が担いで運び込む

といった形で取り扱いを変えている蔵が多いです。

<工程② 床もみ>

引き込み後1−3時間して蒸米の温度が均一になったところで、蒸米を床の上に広げて、そこに「もやし」と呼ばれる麹菌をふりかけ(種付け・種切り)、その麹菌が蒸米全体に満遍なく付着するように、しっかりと手で揉みこんで混ぜ合わせていきます。この一連の作業を「床もみ」といいます。

麹室での種付け

この種付けの作業に使う「ふるい」の大きさも、高級酒向けの麹を造る場合は、蒸米に、より満遍なく正確に菌をふりかけることができるように、普通酒よりはサイズの小さいものを使うことが多いです。

前回説明しましたように、目標とする麹が「総破精型」なのか、「突き破精型」なのかによってもふりかける麹菌の量を調整しなければいけないですから、熟練の技が必要とされる作業です。

床もみをした後は、広げた蒸米を、もう一度集めて積み上げて布で包み込みます。

<工程③ 切り返し>

床もみ後、10〜12時間経つと、蒸米どうしがくっついて塊になってきますので、これを手で崩してほぐすことによって、温度を均一化し、麹菌に酸素を供給してやります。これを「切り返し」と呼びます。

<工程④ 盛り>

切り返しから10時間程度経つと蒸米に麹菌が繁殖し始めている証しである白い斑点が見えてくるようになり、麹菌の増殖による発熱によって蒸米の温度の上昇が始まります。この温度が高くなり過ぎると、麹菌の繁殖を阻害してしまうことから、蒸米を揉みほぐした後、温度調節がしやすいように、一定量づつ箱に入れて分ける作業を行い、この作業のことを「盛り」と呼びます。

麹菌が繁殖し始め、増殖による発熱をするようになってから、「温度調整の戦い」が始まります。これ以降の工程は全て「温度調節」の工程です。大吟醸酒などの高級酒用の麹を造る場合は、蔵に泊まり込んで、数時間おきに温度を測り、麹の状態をチェックしていきます。

普通酒や大量に仕込む必要がある場合には、製麹機という機械を使って麹造りをしますので、コンピューターで温度管理を行い、必要な時にファンから風が送られたり、逆に温められたりします。

しかし、高級酒では人の手によって温度や湿度を測りながら管理していきます。温度調節がしやすいように、「箱」に一定量づつ分けるわけですが、より量の小さい方が調整しやすいので、

細かい調整が必要な大吟醸酒などは「箱」より更に小さい「蓋」と呼ばれるものに分けられる

という場合もあります。こうした製法を各々、箱麹法、蓋麹法と呼ぶこともあります。

<工程⑤ 仲仕事>

「盛り」の後、7〜9時間ほど経過すると、再び、蒸米の温度が上がってきますので、温度を下げるためと麹全体の温度の均一化のために撹拌します。この作業のことを「仲仕事」と呼びます。

<工程⑥ 仕舞仕事>

仲仕事の後、6〜7時間ほど経つと、再び蒸米の温度が上昇してきますので、仲仕事の時と同様に、撹拌して温度を下げてやると同時に、余分な水分を飛ばすために、蒸米に溝を作って、空気に触れる面積を増やすなどの作業を行います。これが「仕舞仕事」と呼ばれるものです。

工程⑤⑥は、大吟醸酒などの場合は、温度・湿度が厳格に管理されている、別の麹室に移して行われる場合もありますし、撹拌の他にも、積み上げた箱・蓋の順番を入れ替えたりして、微妙な調整を行なっていきます。

<工程⑦ 出麹>

麹が出来上がった後、それ以上の麹菌の繁殖を止めるために麹室から出して、温度を下げます。この作業を「出麹」と呼びます。

 

<参考>

前回のその③で、「突き破精型」の麹を目指す理由として、

糖化酵素であるグルコアミラーゼが多く、酸性プロテアーゼなどのタンパク質分解酵素が少ない

ということを書きましたが、実は、この二つの酵素が麹菌が増殖する過程で生産され、その置かれている温度帯によって生産される量が大きく異なっていることがわかっています。

具体的に書きますと、

グルコアミラーゼ ➡️  40℃以上の高い温度で多く生産される

酸性ペプチターゼ ➡️ 35℃程度で最も生産されやく、40℃以上では抑制される

という特徴を持っています。

麹造りにおける時間の経過と蒸米の温度の変化は大体、以下のグラフのようになりますが、上記の二つの酵素の特性を踏まえて、

35℃近辺の温度帯をできるだけ短くして、40℃以上の温度帯の時間を長く維持する

といった温度管理を行うことによって、好ましい特性(酵素活性)を持った麹造りを行なっているわけですね。いやあ、深いです・・・。

次回からは、これも大変重要な工程である酒母造りの説明に入っていきます。お楽しみに!

灘酒研究会HPより

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