唎酒師への道(18)ー 製麹(麹造り)その③ 酒質設計との関わりー

さて、今回は麹造りの具体的な工程説明に入っていきますが、まず、その前に、日本酒を学んでいくと必ず耳にする言葉として、

「酒質設計」

というものがあります。麹造りを説明する前に、まず、この言葉の意味を理解していただいた方が良いと思いますので簡単に書きます。

前回の記事の終わりに、

「普通酒用なのか?、吟醸酒用なのか?」

といった造るお酒のタイプによって、麹の造り方が違ってくるということを紹介しましたが、実際にお酒を造る際には、もっと細かく具体的なレベルで、例えば、同じ吟醸酒でも、

「香りが高く味わいがスッキリした淡麗のタイプ」

を目指すのか、

「香りは、そこそこで、しっかりした味わいがある比較的濃醇なタイプ」

を目指すのか?といった、

「完成したお酒の明確なイメージ」

を予め設定して造っていくわけで、そうした目指すお酒の特性を決めることを、

「酒質設計」

と言います。

酒質設計にあたっては、もちろん、麹だけが要素ではなく、それ以外にも、

「お米の種類」

「精米歩合」

「酵母の種類」

「酒母の造り方」

「アル添の有無」

「加熱殺菌の手法」

「発酵の進め方」

などなど、実に多岐にわたる様々な要素が絡んでくるわけですが、その中でも

どのような麹を造るのか?

ということが、酒質に極めて大きい影響を与える要素なのです。

では、具体的などんな麹があるのか?説明していきます。

 

①【総破精型と突き破精型】

破精とは、その①で説明しましたように、麹菌の菌糸が蒸米に繁殖していくことを指し、その菌糸の繁殖度合い(破精廻り)と、菌糸の食い込み度合い(破精込み)によって、麹は大きく、

総破精型

突き破精型

に分類されます。

酒類総合研究所 「お酒のはなし」平成22年2月1日 第15号より

総破精型は、お米の表面全体に麹菌の菌糸が繁殖し、しかも内部にも食い込んでいますので、色も真っ白です。一方、突き破精型は、お米の表面への菌糸の繁殖は、まばらですが断面を見ると、やはり内部まで、しっかりと食い込んでいます。

この二つのタイプの麹を造るには、麹菌の菌糸の繁殖度合いを、蒸米に振りかける麹菌の量、麹室の温度、湿度などで調整していくのですが、両者を比較すると、それはザックリ次のようになります。

すなわち「突き破精型」の麹を造る場合、まず、蒸米にふりかける種麹の量自体を減らし、蒸米の水分量を少なめにして、米の表面に菌糸が廻りにくくし、麹室の温度を高めにし、米の表面の水分を飛ばし、乾燥した状態に保つことによって、麹菌の菌糸が水分を求めて米の中に食い込んでいくように仕向けるわけですね。

 

②【総破精型と突き破精型の特性】

そして、次に各々の麹の特性を、これもザックリと表にまとめると以下のようになります。

では、個々の項目について順に説明していきます。

<糖化力>

「突き破精型」「総破精型」共に糖化力は強いです。糖化力とは、デンプンからアルコール発酵に必要なグルコースを生成する力ですから、これに関しては両者とも合格点ということで差はあまりありません。

<グルコアミラーゼ・αアミラーゼ>

両者ともに糖化力が強いわけですから、糖化酵素であるグルコアミラーゼも双方ともに多いのですが、液化酵素であるαアミラーゼが「突き破精型」の方が、若干少なめになる傾向があるようです。このαアミラーゼというのは、デンプンの分子を大きな単位でザクザクブッタ切る働きがあり、これによってグルコアミラーゼも作用しやすくなる部分もあるのですが、このαアミラーゼの量が多すぎると、

醪の中で米が溶けやすくなり過ぎて、その結果味が雑になったりくどくなったりする

と言われています。

ですから、スッキリした綺麗で淡麗な酒質を目指す場合、突き破精型」の麹を造っていくことになります。

尚、現在は、そもそもグルコアミラーゼが多くなりやすい性質を持った種麹が製品化されています。

<総麹菌数>

「突き破精型」に比べると「総破精型」の麹は、米の表面全体を麹菌が覆っているので、繁殖している麹菌の数が圧倒的に多いです。そして、思い出してください。麹菌は「生き物」なんです。そして、「生き物」である麹菌が細胞分裂して増殖していく過程で、「脂肪」も生成されることになり、生成される「脂肪」の量は、麹菌の数に比例して増えていくわけです。

そして、もう一つ思い出してください。この「脂肪」って、原料であるお米にも含まれていて、精米することによって、わざわざ減らしていた成分ですよね。せっかく精米によって減らした「脂肪」が麹菌の増殖によって増えてしまうと、その結果、

日本酒の重要な要素である香りの生成が阻害される

ということになるわけです。

ですから、香りが豊かな酒質を目指す場合「突き破精型」の麹を造っていくことになります。

 

<タンパク質分解酵素>

タンパク質も脂肪と並んで、多過ぎると日本酒の雑味につながる成分ということで精米することによって量を減らしているのですが、このタンパク質に作用してアミノ酸を生成するタンパク質分解酵素が「突き破精型」の方が少ないのです。

ですので、この面からも、スッキリした淡麗な酒質を目指す場合「突き破精型」の麹を、濃醇なコクのある酒質を目指す場合は「総破精型」の麹を造っていくケースが多いようです。

また、タンパク質から生成されるアミノ酸は、酵母の重要な栄養源でもあります。

ですから、酵母を大量に増殖する工程である「酒母造り」において使われる「酒母用麹」としては総破精型」の麹が使われることが多いです。

以上のことから、各々の麹について酒質・用途についてまとめると次の表のようになりますね。

やはり長くなり過ぎました・・・。

ぶっちゃけ今回説明させていただいたことまでは、唎酒師試験では問われないと思います。しかし、ここまで理解していないと、本質はわからないですし、例えば、酒蔵見学に行って説明を受けても理解できないと思います。

次回こそは、具体的な工程の説明です!お楽しみに!

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