唎酒師への道(17)ー 製麹(麹造り) その②ー
さて、前回のその①では専門用語の説明だけでしたので、今回からが具体的な話です。
ブログ記事へのアクセス分析を見ると、この「唎酒師への道シリーズ」は、あまり人気がなくて(笑)、他のトピックスを取り上げた方が明らかにアクセス数は増えるのですが、後から順に読んでもらったら、
日本酒に関する知識が整理され、理解も深まって、ますます日本酒を好きになる!
そして
唎酒師試験にも役立つ!
というブログを目指していますので、地道に続けていきます!
さて、本題です。
ー麹の働き・麹造りの目的ー
①【デンプンの糖化】
麹の最も重要な働きは、
アルコール発酵に必要な糖分を、デンプンから生成するために必要な酵素を生成すること
です。
何度も説明しましたように、原材料であるお米にはアルコール発酵に必要な糖分が含まれていませんので、そのデンプンを糖分に変えてやらないと、そもそも話が始まらないわけです。
そして「デンプンの糖化」と「アルコール発酵」という二つの発酵が同時並行的に起こっていく中で、
麹の持つ糖化力が強いこと
が重要になってきます。
この「糖化力」というものは、麹が持つ「糖化酵素の量」に比例し、中でも、
グルコアミラーゼの量が多いこと
が重要です。
②【旨味成分の生成】
麹は、繁殖する過程で、糖化酵素の他にも、タンパク質分解酵素である酸性プロテアーゼや、脂肪分解酵素であるリパーゼを生成します。各酵素の働きを簡単にまとめると次のようになります。
③【酵母の栄養源】
麹は繁殖過程で様々な成分をその内部に蓄えており、これ自体が、アルコール発酵を促す酵母の栄養源となり、酵母の活発な活動を支える役割があります。
ー麹菌の種類ー
麹菌は日本に数社しかない種麹メーカーと呼ばれる会社で培養・開発・保存されており、種麹メーカーは造り手である酒蔵のニーズを聞きながら、それに合った麹を提供することによって、裏方として酒造りに参加しています。言い換えれば、どんな麹菌を使うか?ということは、酒の香りや味わいを決める上で、非常に重要なことであるということですね。
最近は、焼酎造りに利用されてきた「白麹」を使った日本酒が増えてきています。
これは、白麹が生成するクエン酸が、柑橘類にも多く含まれるもので、日本酒に非常に爽やかな酸味をもたらし、黄麹では得られなかった新しいタイプの日本酒として人気が高まってきていることが背景にあります。
「THE 日本酒」という伝統的な味わい・香りも、もちろん素晴らしいですし、それは必ず守っていかなければいけないですが、こうした新しい取り組みによって、日本酒のバリエーションが増えることは、我々、消費者にとっても有難いことです。しかも、あくまでも自然界に存在するものを使っているわけで、人工的に作られた物質を添加しているわけではありませんからね。
さて、今回は、日本酒造りにおける麹の働きと、麹の種類について書きましたが、実は、麹というのは、
「蒸米に麹菌をふり掛けておけばできる」
というような単純な作業ではなく、まず、
「普通酒用なのか、吟醸系用なのか?」
といった造るお酒の種類によって大きく違いますし、酒母用、初添え用、留添え用といった用途でも違いますし、目指すお酒の酒質によっても違ってきますし、使うお米の作柄によっても変えていく必要があるという非常に繊細で複雑な作業なのです。
次回は、その具体的な工程について詳しく書きたいと思います。
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