唎酒師への道(15)ー 蒸しー

さて、今回は、いよいよ「原料処理」の最終工程「蒸し」の説明です。

これまで、説明してきました、「枯らし」、「洗米」そして「浸漬」という各工程は全て、

「良い蒸米を得るため、お米の水分量を最適なものに調整する」

という、「蒸し」のための「準備の工程」でもありました。

以前も書きましたが、日本酒の製造工程において重要と言われている、

「麹造り、酵母の培養、醪の発酵管理」

の全てにおいて「蒸米」が絡んできますから、「良い蒸米」があることが良いお酒を造ることができる大前提となるわけです。ですから「蒸し」は前半戦の最大の山場の工程であるともいえるでしょう。

ところで、日本酒の製造工程において、何故、お米は炊かないで蒸すのでしょう

その理由としては、

・炊くと米の水分量が多くなりすぎてベトついて捌けにくくなる

・炊くと水分量が多くなりすぎて、麹菌が繁殖しにくくなる

・蒸した方が水分量の調整がしやすく、米のα化(糊化)も進みやすい

といったことが挙げられます。お米のα化とは、お米のデンプンが粘り気のある糊状になることを言い、このα化によって結晶状のデンプンに隙間ができ、酵素による糖化がスムーズになるのです。

さて、この「蒸し」の工程ですが、殆どの酒蔵では、浸漬の後、水切りをし、一晩おいた翌朝に行います。そして、昔ながらのと呼ばれる蒸し器(昔は杉製、今はステンレンス製のものが多い)か、連続蒸米機という最新鋭の機械を使って蒸していきます。

杉製の甑

連続蒸米機は大量のお米を効率的、かつ安定的に蒸すことが可能で、普通酒用のお米を蒸す場合や、醪に投入する掛米を蒸す場合に使われることが多く、一方で、蒸し具合の微妙な調整ができる甑は、吟醸系のお酒用のお米や、麹米を蒸すときに使われます。

蒸し時間は、大体40〜60分程度で、外側が硬く、内側が柔らかい「外硬内軟」で適度な水分量を含んだ捌けの良い蒸米を造ることを目指します。

蒸し過ぎて、米が柔らかくなり過ぎてしまうと、

・麹米として使う場合、麹菌の菌糸が米の表面だけに回ってしまい良い麹が出来ない

・掛米として使う場合、お米が溶けすぎて発酵スピードが早くなり調整が難しくなる

といった弊害が出てしまいます。

話は逸れますが、私は、毎年、母と一緒に米味噌を手作りしておりまして、以前、米を蒸し過ぎてしまったことがありました。麹菌を繁殖させる工程で、木箱にお米を広げようとしても、お米が水分を含みすぎて、全く捌けず、ネバネバして、手にもくっつきまくるような状態でしたが、試しに、そのまま麹菌を振りかけて一晩おいてみたのです。そして、翌朝、様子を見てみると、正に米の表面だけに麹菌が回っていて、内部には菌糸は全く食い込んでいってない不健全な麹が出来合っていたんです。でも、ものは試し?ということで、そのまま大豆と一緒に壺に仕込んで、半年後に開けてみたら・・・、見事に、

ドロドロとした液状の味噌

が出来上がっていました(泣)。やはり、この味噌のケースも、蒸米の段階で失敗してしまったことで、良い麹が造れず、結局、発酵もうまく行かなかったわけです。でも意外に味は良かったんですけどね。この辺りが、また発酵の面白いところですが・・・。

さて、話が前後してしまいますし、混乱を招きそうですが、この一連の「原料処理」のプロセスの中で、実は、

お米は最初から、「その用途が決まった上」で処理されていく

のです。

どういうことかと言いますと、一口に「蒸米」と言いましても、下の図のように細かく、どの工程で使われるものかが決まっていまして、例えば、「大吟醸の酒母用」とか、「普通酒の初添えの掛米用」とか決まっていて、それを予め念頭においた上で、「蒸し」の前の工程である洗米や浸漬の時間も決まってくるし、蒸す際の使用設備や蒸し時間も変えていくわけです。

当然、酒蔵では、多くのお酒を、順次、どんどん仕込んでいくわけですから、例えば数十本のタンクにお酒を仕込んでいく場合、それぞれのタンクの工程の進行度合に合わせて、それぞれ蒸米を用意していく必要があるわけで、そうするためには厳密なスケジュール管理が不可欠です。

そして、米が蒸しあがった後、その温度を下げ、水分量を調整するために「放冷」というプロセスを行うのですが、その蒸米の用途によって、両者とも目標値が微妙に変わってくるのですから、これまた、きちんと管理しないと、こんがらがりそうですよね。

こうして、良い蒸米が出来れば、いよいよ、麹造り、酵母の培養(酒母造り)、発酵(醪)管理のプロセスへと移行します。今回も、まだ、説明していない「初添え」「仲添え」「留添え」といった言葉が出てきましたが、そういうものがあるんだ!くらいでスルーしてください。いずれ説明します!

蒸米放冷機

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