唎酒師への道(12)ー 日本酒の4タイプ分類と特定名称酒の傾向 ー
さて、特定名称酒の8種類の分類は、「精米歩合」、「アルコール添加の有無」、「吟醸造り等の製法の違い」によってなされており、それぞれについての説明の投稿記事で、味わいと香りの傾向について個別の図で示してきました。
そして、今回は、これまでの分析を踏まえて、8種類の特定名称酒の味わいと香りの傾向を考えて図にプロットしてみようという、ややチャレンジングな?企画です(笑)
まず、その前に、唐突ですが、実は、唎酒師の資格を認定しているのは
日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI) (英文名 SAKE SERVICE INSTITUTE )
という団体なのですが、そこが消費者に日本酒の普及を図るために、日本酒を4つのタイプに分けることを提唱しておりまして、まさに、これを理解することが唎酒師の試験に合格するためにも必須項目となっています。しかし、それぞれのタイプの細かい説明は、いずれ、酒器、飲用シーン、飲用温度帯、料理とのマリアージュなど、様々なテーマを取り扱う際に、その都度行うこととし、ここではしません。
さて、具体的に4タイプの区分け、名称は以下のようになります。
横軸に味の濃淡、縦軸に香りの強弱をとることによって、4タイプに分けています。これは、私が、これまで使ってきた図と殆ど同じですよね。左上から時計回りに、
香りは高く、味わいは淡い ➡︎ 薫酒
香りも高く、味わいも濃い ➡︎ 熟酒
香りは低く、味わいは濃い ➡︎ 醇酒
香りは低く、味わいも淡い ➡︎ 爽酒
となります。
そして、そのタイプ別の特徴と。主にそのカテゴリーに属する日本酒の種類も書いてあります。「古酒系」、「生酛系」、「生酒系」といった聞きなれない言葉もあると思いますが、まあ、それはスルーしてください。(笑)いずれ説明します。
さて、今回の本題は、特定名称酒の8種類を、ここにプロットすることです。尚、今回は、長期熟成酒、古酒が該当する「熟酒」は考えないことにします。8種類の全てのタイプが熟成させれば「熟酒」に成り得るわけですし、そもそも残念ながら、今は、まだ「熟酒」が一般的に容易に手に入るような状況ではありませんので・・・。では、早速、やってみます!
ザックリ、こんな感じになると思います。
「精米歩合」、「アルコール添加」、「吟醸造り」の投稿での、味わいと香りの傾向を思い出しながらまずは、ご自分で考えてみてください。
あっ、でも、説明していきますよ!
「大吟醸酒」「吟醸酒」の二つは、「低精米歩合」「アル添系」「吟醸造り」の3つのグループに属していますので、最も香りが高く、味わいが淡いということになり、当然、左上の「薫酒」のカテゴリーの中でも、更に左上のエリアにプロットし、かつ「大吟醸酒」の方が香りが高いので「吟醸酒」の上にきます。
次に「純米大吟醸」と「純米吟醸」は、「低精米歩合」「吟醸造り」で、香りは高めということで、同じく「薫酒」のカテゴリーに入るのですが、「純米系」であることによる味の濃さがあり、「アル添系」よりは香りが弱めであるので、先ほどの「大吟醸酒」「吟醸酒」に比べると、やや右斜め下方向の場所にプロットすれば良いでしょう。そして、同じく、「純米大吟醸酒」の方が香りが強いので上になります。
「特別純米」と「特別本醸造」は悩ましいです。と言いますのも、両者の定義を思い出していただきたいのですが、
「精米歩合60%以下、または特別な製造方法を用いたもの」
となっていまして、前半部分を満たしているものは「低精米歩合」のお酒の特徴を持つと推測され、香りも、そこそこ高い「薫酒」に属するものもあると思いますが、後半の「特別な製法」によって、例えば、シンプルで軽快な味わいに仕上がっていれば「爽酒」に分類すべきかもしれないし、もしかしたら、「醇酒」にカテゴライズするべきものもあるかも知れないのです。ですので、ここでは、両者を「薫酒」と「爽酒」のボーダーラインに、そして「アル添系」の特別本醸造酒を左に、「純米系」の特別純米を右側にプロットします。
さて、残りは「本醸造酒」と「純米酒」の二つです。両者とも、「高精米歩合」なので香りは低めなので、下の座標軸になり、そして「アル添系」の「本醸造酒」は味わいが淡白なので「爽酒」に、「純米系」の「純米酒」は味わいがあるので「醇酒」にプロットします。
繰り返しになりますが、味わいや香りは、当然、使っている麹や酵母、その他によってブレますが、まあ、「傾向」としてはこんな感じで良いと思います。
これで一件落着!と言いたいところですが、ここで、皆さん、何かお気づきになりませんか?
そうです!
熟成したお酒以外にも味わいも濃くて香りが高いお酒があるんじゃないのか?
ということなんです。
この図ですと、四分割した右上のエリアを「熟酒」としてしまっているために、左上の「薫酒」のエリアに多くのお酒が集まり過ぎてしまい、ごちゃごちゃして見づらいんです。
日本酒を、この4タイプに分けること自体は、非常に意義があることですし、この分類を行うにあたっては多くの識者の方々が長い時間をかけて、膨大な数の日本酒をテイスティングし、考案された分類方法だと聞いております。そして、いずれ、このブログでも書きますが、この4タイプ別、それぞれについて、どういう飲用シーン、飲用温度、酒器、料理が合うか?を考えていくと極めてスムーズに説明することができます。実際、日本酒造組合中央会のホームページでも、この4タイプ分類が紹介されています。
ただ、実際にお酒を選ぶ際に、そのお酒の個性を表そうとすると、このチャートは少し不便なんですよね。だって、繰り返しになりますが、「熟酒」は、まだポピュラーじゃないですから!
で、こうしてみました!
要するに、
4タイプ分類を一回忘れ、純粋に香りの強弱と味わいの濃淡で4つのエリアに分けただけのチャート
とするわけです。
こうすることによって、右上のエリアに「純米大吟醸」「純米吟醸」「特別純米」が食い込むことができて、右下のエリアの「純米酒」と共にピンク色の「純米系」として囲むことができ、「純米系」は味わいがしっかりする傾向があるということを頭の中にイメージしやすくなります。
また、左右のスペースに余裕ができたことで、個々の特定名称酒の味わいの微妙な傾向の違いを表現できるようになっています。
どうでしょう?見やすいと思いませんか?
当ブログでは、こちらの方が、個々のお酒はもちろん、製法・工程の違いなどによる、味わいや香りの傾向を説明するのには適していると考えておりますので、今後の工程説明の投稿においても、こちらのチャートを使っていきます。
ただ、あくまでも、唎酒師の試験は4タイプのチャートを使いますので、そこは混乱なきようお願いします!
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