日本酒の夏酒ってどういうもの?

まだ5月だというのに、最高気温が25℃を超える夏日になる日も多くて、梅雨入りもしていないのに、酒屋さんの店頭には「夏酒入りました!」のポスターが貼られて、冷蔵庫にも夏酒コーナーが設置され、ネットショップでも数多くの「夏酒特集」が組まれてます。

「夏酒」と言いながら、早いものは4月から店頭に並び始めており、衣服のブランドショップで、まだ真冬なのに春物とか夏物の新作を売り出すのと似ていて、季節感も何もあったもんじゃない!という若干の違和感はありますが、今回は「唎酒師への道」はお休みして、その「夏酒」について書いてみたいと思います。

まずは、そもそも、

「夏酒」に厳密な定義はあるのか?

ということですが、「ありません!」(笑)

「夏酒」という「呼称」が世の中に広まり始めたのは、10年前くらいだと言われており、夏の暑い時期に、売り上げが落ち込む日本酒業界が、販売テコ入れのために打ち出した

「セールス・プロモーション」

という色彩が濃いものだったようです。

ただ、そこから、「消費者が夏に飲みたいと思うお酒はどういうものか?」ということで、各々の酒蔵が色々な工夫を凝らして、商品を投入するようになり、今では、すっかり、「冬の新酒」「春の霞酒」「秋のひやおろし」と並んで、日本酒の定番の商品として定着しつつあります。

では、夏酒の主な特徴を挙げてみましょう。

(1)ラベルのデザイン・商品名でアピール

①清涼感を感じさせる「青色」を使ったデザインが非常に多い

どの蔵も定番商品と異なるラベル・デザインを採用していますが、圧倒的に青色、水色系のラベルが多いです。まあ、確かに、これだけで定番商品との差別化が図れ、涼しげに感じられますよね。

②ボトル自体を青色や無職透明にすることも多い

定番商品はこげ茶色や緑色の場合が多いですが、清涼感を演出するために、濃いブルーや水色、無色透明のガラスを使った瓶にお酒を詰めるところも多いです。ただし、こうした色のボトルは紫外線を通しやすいので、そこは注意が必要です。

③スイカや、ヤゴ、セミ、シロクマ、ペンギン、金魚など夏をイメージさせる、または涼しさをイメージさせる絵をラベルに使う

④「夏」、「涼」、「氷」などの文字を商品名に使う

③④は解説不要ですよね。「直球勝負」で夏酒をアピールし、消費者の「ラベル買い」も期待できるかも知れません。

例えば、夏にホームパーティーを開いて、日本酒を出す場合、こうした夏らしいラベル、デザインの日本酒を出せば、ゲストのテンションも上がりますよね。そして、テンションが上がってくれば、不思議とお酒も食事も美味しく感じるし、何より会話が盛り上がり、楽しい時間を過ごせるわけです。

「たかがラベル、されどラベル」

です!

(2)お酒自体の個性でアピール

①フレッシュな飲み口の「生酒」タイプ

「生酒」とは、火入れと呼ばれる低温殺菌をしていないお酒で、酵素や酵母、更には雑菌が活動できる状態で酒質が変化しやすいのですが、これを低温で数ヶ月、しっかり管理・貯蔵したものが「夏の生酒」として商品化されています。生酒の特徴としての、フレッシュさ、みずみずしさに加えて、短い期間とはいえ低温貯蔵で熟成していることからくる、滑らかさ、まろやかさも併せ持っており、夏に、しっかり冷やして飲めば、当然美味しいわけです。

②酸味のしっかり効いたタイプ

・日本酒における「酸味」というものは、あまり評価されていない時代もありましたが、ここにきてワインブームなどもあって、消費者のニーズも多様化し、日本酒造りにおいても、製法の工夫や使用する麹を変えることによって、酸味の効いたものが多く造られるようになってきました。夏には「キリッと冷えた白ワインを!」というものが定番化していましたが、この心地よい酸味を感じられる日本酒を冷やしたものも本当に美味しいです。

③微発泡のタイプ

・火入れ(低温殺菌)を行わないと、瓶に詰めて貯蔵した後も、瓶の中に残った酵素や酵母の活動が続き、アルコール発酵が進み、アルコールと同時に「炭酸ガス」が生成される場合があり、特に、抜栓直後はガス感を感じる場合があります。この微妙に舌に感じるガスが、清涼感となり、夏に飲むにふさわしいですね。

①②③いずれも、蔵によっては、通年販売している場合もありますが、やっぱり、当然、ラベルだけでなく、酒質や味わいでも清涼感を感じれることが重要ですから、こうしたタイプを「夏酒」として商品化するところも多いのでしょう。

(3)飲み方・楽しみ方の提案によるアピール

①オン・ザ・ロック、みぞれ酒

ウィスキーなどと同じように、氷を入れたグラスに日本酒を入れて飲むスタイルや、日本酒を凍らせてシャーベット状の状態にして飲む「みぞれ酒」というスタイル、両者とも「冷たい!」という温度から受ける感覚はもちろんですが、見た目も含めて夏にふさわしいですよね。

日本酒は醸造酒の中でもアルコール度が高いため、もともと殆どが瓶に詰める前に水を加えてアルコール度を調整しているわけですから、例えば、アルコール度を調整していない「原酒」と言われるものや、濾過をしていない「無濾過」、「にごり酒」と言った味わいが濃い日本酒を、オン・ザ・ロックで飲めば、徐々に氷が溶けていくプロセスで、温度やアルコール度数の変化による味わいの変化も楽しめるはずです。そう考えると、「無濾過生原酒」なんてオン・ザ・ロックに最適なのでは?と思います。あ〜、飲みたくなってきた(笑)

②日本酒カクテル

・実は、私は学生時代、カフェ・バー(死語?)と呼ばれている店でアルバイトをしていまして、3年間、バーテンダーをやっていたことがあります。そのお店には沢山のカクテルのメニューがありましたが、当時、その中に日本酒を使ったものはありませんでした。しかし、現在は、非常に多くの日本酒をベースにしたカクテルが考案され、ポピュラーになってきています。

オシャレなカウンターのあるバーで、バーテンダーによって、シェーカーで振られてキンキンに冷えたフルーティーで色鮮やかなな日本酒カクテルを飲む、お一人様の女性(いや、男性でもいいし、お一人様じゃなくていいんですが・・・)、いい感じですよね。何だか、夏酒というテーマとは関係なくなってきている気もしますが気のせいでしょう。

実は、日本酒造組合中央会でも、「涼を運ぶ日本酒のクールスタイル」という、暑い夏における日本酒の様々な飲み方を提案しています。緑茶やミルクで割ったり、柑橘系の風味を加えたりといったシンプルなものが多いですが、逆にいえば、すぐに簡単にできるものばかりなので、是非、夏場の家飲みの時にトライしてみてはいかがでしょうか?

 

 

 

 

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