唎酒師への道(9)ー アルコール添加 その① ー

さて前回の特定名称酒の記事で、「アルコール添加の有無」によって、名称が異なることを説明しましたので、今回は「(醸造)アルコール添加」そのものに焦点を当てて理解を深めていただくよう頑張って解説していきます。

①アルコール添加の歴史と、その目的の変遷

〜始まりは江戸時代 〜

微生物学など存在しない時代には、発酵中に雑菌の繁殖によって腐造=醪(発酵途中の段階の液体)が腐ってしまうこと、が生じることも多く、腐造となれば酒蔵は大きな損失を被ってしまうため、何とか手立てはないか?と色々と対策を考えていたところ、

アルコール度数の高い焼酎を加えると悪性の雑菌の繁殖が抑えらえる

ことを発見し、その手法が次第に広まっていきました。ですから、アルコール添加の当初の目的は

・雑菌の繁殖を防ぎ、安全に酒造りをするため

であったわけです。因みに、添加されていた焼酎は「柱焼酎」と呼ばれていました。

〜第二次世界大戦と米不足〜

これは「日本酒の都市伝説 その②」でも書きましたが、終戦後、米に限らずですが、色々な物資が不足していた時代、日本酒を造る際に、米、米麹と水以外に、大量のアルコールを添加し、味わいが薄まった分を調整するために、更にブドウ糖や水飴といった糖類、酸味料などを加えて、量を3倍に増量するという製造法が編み出され(三倍増醸酒)、この方法を用いれば、手間暇かけずに大量に、しかも安いコストで日本酒が製造できることから、米不足が解消された後も、消費者側からのニーズもあって、長い間、安価な日本酒を提供する製造方法として定着してきました。そして、現在も二倍増醸酒までは認められています。

ですから、当初の出発点は米不足への対応でしたが、アルコール添加の目的として、新たに、

・工業的に大量の日本酒を製造し、安価なお酒を求める消費者のニーズに応える

という目的が出てきて、特に「普通酒」のカテゴリーでは、それが現在も色濃く継承されているいえるでしょう。

〜現代、テクニックとしてのアルコール添加〜

下のグラフを見てください。これは、特定名称酒に限定した出荷量の推移です。「吟醸酒」には「大吟醸酒」が、「純米吟醸酒」には「純米大吟醸酒」が含まれている数字です。

これを見ると、2010年や2015年に比べれば、アルコール添加が行われている「吟醸酒」、「本醸造酒」は出荷量が減少しており、特に「本醸造酒」は激減していますが、ここ数年は落ち込みに歯止めがかかりつつあり、根強いニーズがあることをうかがわせます。

日本酒造組合中央会調べ

では、何故、特定名称酒においても、アルコール添加をしたお酒が造り続けられるのか?

実は、特に、精米歩合が高く、吟醸造りもしていない「本醸造酒」に関しては、酒蔵のある地元の昔からのファンの、

コストパフォーマンスの良いお酒を飲みたい!」

というニーズに応えるため、販売価格を抑える目的でアルコール添加を行なっているという面があるのも否定できません。アルコール添加量は普通酒に比べて大幅に抑制されているものの、やはり、純米酒に比べるとコスト削減効果はありますからね。

しかし、こうしたコスト面以外でも、現代においては、

・日本酒の酒質や香りを調整する目的

でアルコール添加が行われているという事実があります。

そのアルコール添加の効能の説明の前に、まず、そもそも、現代において、アルコール添加に際して使われている醸造アルコールとは何か?ということから書きますと、その殆どが、

”南米や台湾といった海外でサトウキビを原料にして砂糖を精製した時に生じる「廃糖蜜」というものを蒸留した「粗留アルコール」を輸入し、焼酎を造る時にも使う連続式蒸留機で更に再蒸留した、純度95〜96%のエタノールに水を加えてアルコール度30%程度まで薄めたもの”

ということになります。長すぎますね(笑)。

糖蜜」という漢字からくる印象の悪さ、そして、何故、日本酒を造るのに海外から輸入した原料をでつくられたアルコールを使うのか?と疑問を持つ人も多いと思いますが、要は、梅酒などに使われるホワイトリカーと一緒で、

「無味無臭・無色透明な液体」

です。

では、次に、その「無味無臭・無色透明な液体(エタノール)」が日本酒の味わいや香りにどう影響するのか?ということですが、それは、

①味わいがスッキリとし淡麗辛口に感じやすくなり喉越しも良くなる

②吟醸香と言われるフルーティーな香りを引き出す効果がある

の2点です。

まず、①に関してですが、

「アルコールによる刺激が増すこと」

「純米酒に比べて、米のエキス分が少なくなること」

によって、造りにもよりますが、純米酒に比べて軽快で辛口テイストのお酒だと感じさせる効果があります。

また、②に関しては、

「吟醸香と呼ばれるカプロン酸エチルや酢酸イソアミルといった物質がエタノールに溶けやすい」

ことが科学的に解明されていて、アル添しない場合に比べて、搾った後に酒粕に香りが逃げてしまうことを防ぎ、お酒への歩留まりが良くなることで、より強い香りを出せるようになるわけです。

ですから、長い間、強い吟醸香を引き出すことが高評価の最大のポイントとされてきた全国新酒鑑評会の出品酒は、

殆どがアル添ありの「大吟醸酒」で「純米大吟醸酒」ではない

という状況が続きました。最近は、純米大吟醸酒も増えてきていますが、引き続き、アル添ありの大吟醸酒が多数を占める状況に変わりはありません。

以上が、アルコール添加のザックリとした歴史です。

やはり、一回で説明しきるのは無理でした・・・。次回、その②では、アルコール添加と日本酒が抱える課題、アル添酒との付き合い方など書きたいと思っています。

 

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