唎酒師への道(8)ー 特定名称酒とは? ー
精米という工程、そして精米歩合と、その味や香りへの影響について前回説明しましたので、今回は、皆さんが日本酒のラベルや、メニューで必ず目にする日本酒の「特定名称酒」について書いていきます。
実は、特定名称酒は、精米歩合の他に、
「アルコール添加の有無」
「吟醸造りか否か?という製造方法」
といったことでも区分けされており、そもそも言葉の意味がわからない!という方もいらっしゃると思いますが、それは別途テーマとして取り上げますので、今回はあくまでも
「特定名称酒の種類とその区分けの方法」
を理解するということを目標として下の図を使って説明します。
その前に、実は酒税法における清酒(日本酒)の定義というものがありますので、それを説明します。
その定義とは、
米、米麹、水を原料として発酵させて濾したもので、アルコール度数22度未満のもの
となっております。例えば、数は少ないですが、全く酒粕を濾していない「正真正銘の?どぶろく」やアルコール度数が22%以上のお酒は「清酒(日本酒)」という表記ができず、リキュールという表記になります。
そして、今回取り上げた「特定名称酒」ですが、これは酒類業組合法で規定されており、製造方法、アルコール添加の有無、精米歩合などによって8種類に分類されます。因みに、特定名称酒以外のものを「普通酒」と呼ぶことが多いですが、ボトルのラベルに「普通酒」という記載はなく「清酒」とか「日本酒」とだけ表示されているケースが殆どです。
そして、日本酒全体の出荷量に占める特定名称酒の割合は3割強に過ぎず、7割近くを普通酒が占めているのが現実です。ただ、昨今の日本酒への関心の高まりから、全体の量の減少傾向に歯止めはかかっていないものの、特定名称酒の出荷量は僅かながら上昇基調となっています。
まず、最初の図の区分けの説明に入る前に、そもそも、特定名称酒が満たさなければならない3つの条件がというものがありますので、それを列挙しますと、
①原料は白米、米麹、醸造アルコール、水のみ
②使用米は農産物検査法により3等以上に格付けされたもの
③麹米の使用割合が15%以上
となります。
①に関しては、この他に、酸味料、糖類、アミノ酸塩などの添加物が入っているお酒が山ほど、流通していますが、そういったお酒は特定名称酒のカテゴリーに入れないということです。
②に関しては、実は、獺祭で有名な山口県の旭酒造さんが、「等外米」を用いた日本酒を出していらっしゃいまして、これは、以前なら「くず米」として処分していたお米を、磨いて磨いて、中心部分の酒造りに適している部分を使って醸造しているわけですが、等外のお米を使用しているということで「普通酒」のカテゴリーになるわけですね。十分、美味しいんですけどね。
③に関しては、一つの仕込みに使うお米の総重量のうち、麹菌を繁殖させるための麹米の重量が15%以上でなくてはならないという意味で、麹歩合が15%以上という言い方もします。因みに、麹菌を繁殖させない原料としてのお米のことは「掛米」と言います。
話が若干逸れますが、よくスーパーなどで見かける「米だけのお酒」という類のお酒は、②もしくは③の条件を満たしていないので、「純米酒」を名乗れないのです。そして、これまた余談ですが、こういうお酒を消費者が特定名称酒である「純米酒」と間違わないように、
「純米酒ではありません」
といった表記をすることが義務付けられているのです。
さて、それでは、いよいよ図の説明をしていきます!
スクロールして見るのも大変なので、もう一度同じ図を貼りますね。
横軸がアルコール添加の有無と量、縦軸が精米歩合になっており、製造方法の違いにより、更に分けられております。アルコール添加を10%以上しているものに関しては、全てが「普通酒」で特定名称酒ではありませんから、除外するとして、まず、アルコール添加の有無によって、
「純米系」と「アル添系」
の二つに大きく分けられます。
では「純米系」から図をもとに説明します。
まず、前述した「米だけのお酒」といった類のものは「普通酒」です。
「純米酒」には精米歩合による規定がありません。以前は70%以下という基準があったのですが、醸造技術の向上によって酒質が向上したことを受けて、平成15年にその基準が撤廃されました。
そして、各々の呼称の規定を書きますと、
「特別純米酒」 ➡︎ 精米歩合60%以下、または特別な製造方法を用いたもの
「純米吟醸酒」 ➡︎「吟醸造り」と言われる製造方法で造られた精米歩合60%以下のもの
「純米大吟醸酒」➡︎「吟醸造り」と言われる製造方法で造られた精米歩合50%以下のもの
となります。
そして、ここからが、ややこしいのですが、図を見ていただくと、例えば、精米歩合50%以下のところには、
「純米系」のお酒4種類、全てが入る可能性がる
ということがお分かりいただけると思います。
まあ、実際のところ、ここまで精米歩合が低いお酒で吟醸造りなどの、こだわりを持った造り敢えてしていないというのは非現実的ですので、この精米歩合で「純米酒」というものは殆ど存在しないでしょうが、あくまでも理論的にはあり得るという話です。
そして、もう一つ混乱することがありまして、例えば、
精米歩合50%以下の場合、純米大吟醸酒を名乗れるのですが、酒蔵の判断で純米吟醸酒としてもOK
なんです。
具体的な例を挙げますと、
同じ酒蔵に精米歩合が35%と50%の純米吟醸酒がある場合、前者を純米大吟醸酒、後者を純米吟醸酒
とするようなケースですね。
そして、更にややこしいのが「特別純米酒」です。もう一度、規定を書きますね。
「精米歩合60%以下、または特別な製造方法を用いたもの」
となっておりまして、まず、前半の部分は簡単で、
精米歩合は60%以下だが製造方法として吟醸造りをしていないので吟醸酒を名乗れない場合
が、このカテゴリーに入るのだろうと理解できますよね。
問題は後半部分の「特別な製造方法」です。要するに、
「精米歩合が60%を超えていても「特別な製造方法」を用いていれば特別純米酒を名乗れる」
わけです。(尚、図では便宜上、精米歩合70%以下としています。実際、70%以上の特別純米酒は見たことありません・・・)
では、何が特別な製造方法なのか?ということなんですが、これも明確な規定はありません(泣)。
明確な規定はないのですが、例えば、
・杉の木樽を使って熟成させたお酒
・麹米だけでなく掛米にも酒造好適米を使用したお酒
・長期低温発酵で味わいを落とすことなく低アルコール度数を達成したお酒
・精米歩合は60%より高いが、長期低温発酵させ吟醸造りに近い手間をかけて造ったお酒
といったものを、酒蔵の判断で「純米吟醸酒」や「純米酒」と区別して「特別純米酒」とすることが多いようです。
あ〜、わかりづらいですね・・・。
やはり、長くなってしまいました。もう一息ですので頑張りましょう!
残るは「アル添系」ですが、こちらは、
「本醸造酒」 ➡︎精米歩合70%以下のもの
「特別本醸造酒」 ➡︎ 精米歩合60%以下、または特別な製造方法を用いたもの
「吟醸酒」 ➡︎「吟醸造り」と言われる製造方法で造られた精米歩合60%以下のもの
「大吟醸酒」 ➡︎「吟醸造り」と言われる製造方法で造られた精米歩合50%以下のもの
となります。
「純米酒」の精米歩合に規定がなかったのに、「本醸造酒」には70%以下という規定があるのが要注意ですが、その他の区分けのルールと考え方は「純米系」のお酒と同じですので、そちらを参照してください!
最後までお読みいただき有難うございます!長くなってしまいましたが、この「特定名称」というものは、必ずボトルに記載されていますし、日本酒を選ぶ際の非常に大切な指針になりますので、是非、紹介した図を見ながら読み返して理解してくださいね!
次回は、これも、また壮大なテーマなんですが、今回、細かい説明をスキップした「アルコール添加」について書きます!
にほんブログ村
日本酒ランキング