唎酒師への道(25)ー 醪仕込み・発酵 ー その① 三段仕込み

さて、久しぶりの「唎酒師への道」シリーズ。

麹造り、酒母造りときて、今回からは、いよいよ「醪仕込み・発酵」の工程です。

当ブログでも、何度も出てくる日本酒の製造工程における重要度をあらわすフレーズ、

「一麹、二酛、三造り(イチギク、ニモト、サンツクリ)

「造り」に該当する工程です。

このフレーズ通りだと、重要度が三番目ということになるのですが、このプロセスこそが、日本酒の独特の発酵形態である、

「並行複発酵」

が行われるプロセスで、高度な発酵管理技術が必要となる、酒質に決定的な影響を与える極めて重要な工程です。

そして、実は、完成した「麹」「酒母」「蒸米」を「水」と共に、単に、一度に発酵タンクにブチ込んでしまえば、発酵が始まるという、ワインのような単純なわけにはいかず、

その仕込み方にも工夫

がなされていまして、当然、そこには、そうする理由が存在するのです。

今回は、その代表的な仕込み方法である、「三段仕込み」についてご紹介します。

まずは、その手法を図で書いてみますね。

 

そして、具体的なプロセスを文章で書きますと以下の通りになります。

<一日め:初添え仕込み>

まず麹、水、酒母を小さめのタンクに投入し(水麹)、そこに蒸米を加える。小さめのタンクを使うのは、酵母を増殖させるために必要な厳密な温度管理を容易にするためです。酒母:残り=1:2の割合。

因みに、気温が高い場合や、発酵力が強い場合には、初添えに小さなタンクを使わずに、いきなり大きなタンクに仕込む場合もあり、それは「すっぽん仕込み」と呼ばれます。

<二日め:踊り>

初添えの翌日は、何も投入しないで酵母の増殖を待ちます。引き続き温度管理は厳密に行います。この辺りまでは、温度も12〜13℃という温かめの温度で、酵母が増えるのをサポートします。

<三日め:仲添え仕込み>

初添えの2倍程度の量の、麹、水、蒸米を追加投入します。

<四日め:留添え仕込み>

仲添えの2倍程度の量の、麹、水、蒸米を更に投入します。

 

さて、では、なぜ、タンクに一気に必要な量の麹、蒸米、水、そして酒母を投入してしまわないのでしょうか?

それは、

安全な環境で酵母の増殖を図り全体のスムーズは発酵へと移行させるため

なんです。

どういうことかと言いますと、酒母造りの工程を思い出していただきたいのですが、酒母造りでは、雑菌や野生酵母の繁殖を防ぎ、淘汰するために、乳酸菌が生成する乳酸を必要としていましたよね。そして、完成した酒母には、大量に培養された酵母と共に、乳酸菌が生成した乳酸もたっぷり含まれています。

そして、この醪を仕込むタンクも、実は、上部が開放された開放タンクの形のものが多いので、雑菌や野生酵母に侵されるリスクに晒されるのは酒母と一緒なんです。

ですから、酒母の中に含まれている乳酸が重要な役割を果たすわけですが、もしも、一気に全ての分量をタンクに投入した場合を考えてみてください。

酒母が占める割合は全体の分量の5〜6%程度

でしかありません。

そうなると、何が起こるかと言いますと、

一気に全体に占める乳酸の濃度が下がるのでその効力が鈍り雑菌などが繁殖する隙を与えてしまう

わけです。

そういう事態を防ぐために、三段階に分けて、徐々に分量を増やして投入し、「ある程度の酸度」を保って、雑菌の増殖を防ぎながら酵母を増殖させ、投入した材料全体の順調な発酵へと繋げていくわけですね。

本当に良く考えられてますよね〜。

因みに、この仕込み方法ですが、4日間かけての三段仕込みが圧倒的に主流ですが、昔ながらの手法では、八段仕込みなんてのもありまして、極僅かですが、実際に、その手法を用いて造られているお酒もありますし、

三段仕込みの後に、甘みやコクを加える意図

で、更にもう一段、蒸米を投入する「四段仕込み」と言った手法を用いる酒蔵も存在します。

さて、次回は、本丸の、発酵が始まった後の管理について書いてみたいと思います!

四段仕込みで造られた花泉酒造 ロ万

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