唎酒師への道(16)ー 製麹(麹造り) その①ー

さて、久しぶりの「唎酒師への道」シリーズ、今回からは「製麹(麹造り)」、その第一回目です。

以前もご紹介しましたが、昔から日本酒造りにおいては、その工程の重要性を表す言葉として、

「一、二酛、三造り」(イチギク、ニモト、サンツクリ)

という言葉がありまして、製麹は、最も重要な工程とされているわけで、しかも、専門用語も多く出てくることから、到底、一回では説明できるはずもなく、その③とか、もしかしたら、その⑤とかまで行くのではないか?という気もしないではないですが、何とか興味を持って読んでいただけるように頑張ります!

そして、ちょっと異例ではありますが、まず、今回のその①では、関連する専門用語の意味を整理することから始め、その②以降で、具体的な説明をしきたいと思います。

自分もそうでしたが、特に発酵に絡むプロセスを学ぶ場合、例えば「麹」「麹菌」「酵素」、「酵母」と似たような用語がたくさん出てきて混乱する場合が多いんですよね。

ですから、今回は、用語について「そういうものなんだ!」とザックリ、頭に入れていただいて、その②以降の説明でわからない用語が出てきたら、「その①」に戻って確認するといった要領で進めていただければと思います。

 

①【麹菌】

カビの一種で、日本にしか存在しない菌で2006年に「国菌」として認定されています。日本酒造りにおいて使われるのは、主に、黄麹(学名:アスペルギルス・オリゼー)と呼ばれるものですが、最近は、焼酎に使われていた白麹や泡盛に使われている黒麹を使う場合もあります。麹菌は「もやし」とも呼ばれ、日本に数社しかない種麹メーカーによって培養・販売されています。

 

②【麹(麹米)】

日本酒造りにおいて、

「麹菌を蒸米に繁殖させたもの」

麹(麹米)です

そして麹を造る工程のことを「製麹」と呼びます。そして、麹が造られる過程で、アルコール発酵に必要な糖分をデンプンから造る働きのある糖化酵素を始め、様々な酵素が生成されます。

麹は、また酵母の栄養分にもなります。

そして特定名称酒を名乗るための条件として、

使用する全白米の総量に対して、この麹(麹米)の使用割合(=麹歩合)が15%以上

でなくてはならないとされているのです。

 

③【酒母麹と掛麹】

前回の「蒸し」の記事でも書きましたが、麹米は、酵母を大量に培養するプロセスである「酒母造り」に使われる「酒母麹」と、醪の仕込みに使われる「掛麹」の2種類があります。そして、「掛麹」は仕込みの段階別に、更に「添麹」「仲麹」「留麹」と呼ばれ、原料処理の段階から、用途が決まった形で工程が進んでいきます。

 

【酵素】

麹菌や酵母が生成する物質で、生物ではありません。日本酒の製造に関わるものとしては、液化酵素αアミラーゼ)、糖化酵素(グルコアミラーゼ)や、タンパク質分解酵素酸性プロテアーゼ、酸性カルボキシペプチターゼ)、脂肪分解酵素リパーゼ)などがあります。

⑤【液化酵素】

αアミラーゼは液化酵素と言われ、デンプンを構成する分子を大きな単位で分解し、糊状にして溶けやすくする作用があります。

 

⑥【糖化酵素】

「グルコアミラーゼ」は糖化酵素と言われ、αアミラーゼによって可溶化されたデンプンからグルコース(ブドウ糖)を生成します。そして、このグルコースに酵母が作用することによって、アルコール発酵が生じるわけです。そして、以前、説明しましたように、日本酒は「糖化」と「アルコール発酵」を同時に行っていくという「並行複発酵」という手法を用いて造っていきますので、そのバランスが非常に重要になり、アルコール発酵を順調に促すためには、糖化力の強い麹、すなわち

「グルコアミラーゼが多く含まれた麹」

が望ましいとされています。

⑦【酵母】

単細胞の微生物で、発酵を促すもと(=母)であり、ビール酵母、パン酵母、味噌酵母など様々な酵母が存在しますが、日本酒造りにおいては、糖分を利用してアルコール発酵を促す役割を果たします。日本酒造りに使われる酵母も非常に多くの種類があり、日本酒の特に香りに大きな影響を与えます。

 

⑧【麹室】

酒蔵内にある製麹を行う部屋のことです。麹菌の繁殖に適した条件を作るため、冬でも30℃〜40℃の温度を保てるように外気と遮断できる形になっていて、換気もでき湿度も管理できるようになっています。内装は杉板張りだったり、ステンレスだったり様々ですし、壁内部に備長炭を塗り込んだり、完全にコンピュータ制御だったりと蔵によって色々と特性があります。雑菌などの混入を防ぐために、蔵見学でも内部には入れないことが多いです。

 

⑨【破精(ハゼ)】

蒸米に麹菌の菌糸が繁殖していき白く見えるようになった状態のことを破精といい、米の表面での菌糸の拡がりを破精廻り、米内部への菌糸のくい込みを破精込みと呼びます。この破精の進行具合=麹菌の繁殖度合いで、完成した麹の持つ酵素力が大きく異なり、お酒の香りや味わいへの影響も大きくなります。

麹室

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