唎酒師への道(10)ー アルコール添加 その② ー

さて、前回は「アルコール添加」の歴史について書きました。アルコール添加は、その目的は当初と現在では異なってきているとは言え、江戸時代に始まったわけですから、

日本酒のアルコール添加には300年以上の歴史がある

ということになります。

そして、「このアルコール添加」という技術に関しては、日本酒業界においても、そして日本酒ファンの間でも、賛否両論を含めた熱い議論が続いています。

「純米酒派」の観点からは、

①日本酒の歴史は2000年とも言われており、たかだか300年の歴史しかないアル添は邪道

②アル添酒の中にはアルコール臭が気になったり、ピリピリと舌への刺激が強いお酒も多い

③醸造技術の向上によってアル添に頼らなくても、様々な個性を持つ純米酒を造ることは可能

④ワインの世界では、アル添されているポートワインやシェリー酒といったものは「フォーティファイド・ワイン」として別カテゴリーに分類されているのに、日本酒の場合は区別されていないことから、特に海外顧客の混乱を招く懸念がある

⑤重要な原料である米さえも他県から取り寄せる事も多いのに、更に海外から輸入した原料を蒸留して造ったアルコールを加えて醸したお酒が果たして地酒と呼べるのか?

といった意見が出されることが多いと思います。

しかし、日本酒造組合中央会の資料によりますと、平成27年においても、

特定名称酒に分類され、かつアル添をしていない「純米酒」「純米吟醸酒」「特別純米酒」「純米大吟醸酒」の4種類の占める割合は、日本酒全体の出荷量の僅か18%ほどに過ぎない

わけで、「アル添酒」が圧倒的なシェアを占めているのが現状です。(実際は、普通酒でアル添してないものもありますので、正確には残りの82%が全てアル添酒という訳ではありませんが・・・)

要するに、依然として、

消費者の強いニーズがある

ということですよね。

「価格が安い」というのが、もちろん最も重要なポイントでしょうけど、飲み慣れたアル添酒のキリッとした味わい、飲み口を求める顧客層が根強く存在し、酒蔵側も、そういう昔から経営基盤を支えてくれた地元の愛飲者の需要に応えるために「アル添酒」を造り続けているという構図なのでしょう。

しかし酒蔵の中には、アル添を単にコストダウンのために使うのではなく、

酒造りにおける一つの高度な技術

と位置付けて、本醸造酒や特別本醸造酒に関しては、

・添加する量やタイミングに細心の注意を払う

・使用する麹の造り方への工夫をする

・通常の仕込みに、もう一段階、仕込みを加えて甘みの調整を行う

・貯蔵方法や貯蔵期間の工夫をする

などにより、②で述べたようなアル添の嫌なイメージを払拭しつつ、キレの良さ、爽快感に加え、旨味も感じられるという酒造りをしているところも増えてきていて、実際、純米酒に引けを取らないものあります。

そして、②の問題が解決されているのであれば、残りの①③④⑤は、個々の主義主張であったり、日本酒自体が抱える制度問題であったり、精神論的なものであったりして、「お酒自体の味わい」とは無関係なものなので、飲み手の嗜好として、または合わせたい料理によって「アル添酒」を選ぶという機会も増えていくのでしょう。

実際、自分も、基本は「純米酒派」ではありますが、例えば「もつ鍋」や「焼肉」といったような料理の脂分をお酒で切りたい!というような時には、本醸造酒を選ぶことが多いです。

お酒はあくまでも、嗜好品ですから、自分自身の「主義」も「好み」もあって当然ですので、「純米しか飲まない!」というポリシーがあっても良いですし、「アル添酒には、アル添酒の良さがある」と容認し、より様々なタイプの日本酒を楽しむというのもアリ!ということですね。

最後にアル添の有無による味わいと香りの傾向を、ザックリと示すと以下のようになります。もちろん、様々な要素の組み合わせによって変わってきますが、あくまでも「傾向」ということでご理解ください。

次回は、やはり特定名称酒の区分けのところで出てきた「吟醸造り」を取り上げます。

 

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