唎酒師への道 (4) ー日本酒の原料 お米編 その②ー

さて、お米編の第二弾です。原料であるお米について、詳しく書こうとすると、どうしても、お酒造りの工程における専門用語を使わないと説明できない場合がありますが、ここでは、そういった専門用語はできる限り使わないで、でも重要なポイントは理解していただけるよう頑張ってみたいと思います!

②代表的な酒造好適米

日本酒ビギナーの方でも、「山田錦」というお米の名前はご存知でしょう。酒屋さんに行って、日本酒を選ぶ際にも、ボトルのラベルに大きな文字で「山田錦使用」なんて書いてあるものを目にする機会が非常に多いですからね。実際、酒造好適米の中でも、日本酒造りに適した多くの優れた特性を持ち、最大の生産量を誇っているお米で、全国新酒鑑評会に出品されるお酒も、圧倒的に山田錦を使用したお酒が多いのが現状です。下の表を見てください。100%同じ酒造好適米を使った出品酒828点のうち、山田錦100%のものが705点、割合にして実に85%以上を占めているのです。

さて、小難しいことは横に置いとおくとして、皆さんが一番興味があるのは、

原料である酒造好適米の違いによって日本酒の酒質に明確な違いがあるのか?

ということだと思いますが、この質問に答えるとすれば、

何とも言えない

ということになってしまいます。「何だよ、じゃあ、もう読む価値ないじゃないか!」と思わないでください!(笑) 詳しくは次のパートで!

平成26酒造年度 全国新酒鑑評会出品酒の分析について より抜粋

③ワインと日本酒の違い

ワインは、唎酒師への道(1)で説明したように「単発酵」という非常にシンプルな発酵形態で造られ、極論すれば、原料である葡萄を潰して搾った果汁に酵母を加えて発酵させればできてしまうので、人の手を加えるところがあまりなく、工程がシンプルである分、

❶原料である葡萄の特徴

❷栽培技術や天候による葡萄の品質の差

❸栽培地域の土壌の特徴

などが、各々のワインに明確に現れ、それがワイン自体の魅力にもなっている部分もあるでしょう。

それでは、日本酒はどうか?と言いますと、まず❶に関しては、もともと、お米の種類の違いによって、成分に多少の違いがあるものの、葡萄ほど味わいや香りに明らかな差はないですし、❸に関しても、お米は葡萄と違って品質の変化を気にしないで容易に長距離の運搬が可能な原料ですので、例えば、東北の酒蔵が兵庫県産の山田錦を使って日本酒を造るなんてことは当たり前にできてしまいます。

そして、何と言いましても、日本酒の場合は、酒造りにおける多くの工程の中で、人が実に高度な技術を駆使し、繊細な管理をしてあげることや、使用する麹や酵母を変えることで、❶❷❸に起因する「原料米の差」を埋めることが可能であるという点がポイントです。例えば、❷のケースで考えた場合、気候の違いによる米の水分の違い、それに起因する「溶けやすさ・溶けにくさ」などを考慮した上で、麹の造り方、醪の管理などなど、各工程で微調整をして、質の高いお酒造りを目指していくわけです。要は、言い換えれば、原料の違いや、原料の出来の違いがあっても「ある程度似たようなお酒」を造ることが可能であるということです。

一方で、新酒鑑評会で、なぜ圧倒的に山田錦を使う蔵が多いのか?を考えてみますと、それは、その技術を駆使すれば、

鑑評会で良い評価を得られやすい山田錦の特徴を活かした酒質のお酒を造れる

ということに他なりません。ということは、単一の酒造好適米を使用する場合、造り手が「その米の個性」を引き出そうとする造り方もできるはずなので、そういう造り方で醸されたお酒であれば飲み手側も、

使われている酒造好適米を、ある程度絞り込むことは可能

だとも言えます。

しかし、日本酒には余りに工程が複雑であるが故に、味わいや香りに影響を及ぼすプロセスが多く存在することから「全く同一条件」で米違いのお酒の比較ができるという機会が、なかなかないですし、酒蔵が違う場合は、見かけ上は同じ条件でも、そもそも酒蔵がある地域の気候(気温)が違いますし、水も違うし、酒造りでの”こだわり”も違うし、そもそも杜氏さんも違うわけで、それが酒質に多大な影響を及ぼすわけですから、

酒質の違いによって原料となっている酒造好適米をピンポイントで当てるのは難しい

ということも言えるでしょう。

ですので、先程の質問への答えは「何とも言えない」という中途半端なものになってしまったわけです。

④最近の傾向

最近は、使用する原料米を遠方から仕入れるのではなく、地元産のお米のみを使う酒蔵が増えています。「オール広島」とか、「オール秋田」といった具合で、地元で育てたお米、地元で分離・開発された酵母を使い、地元の水で日本酒を醸すわけです。それこそが地酒であるわけで、そういう造りの地酒こそが、地元の郷土料理ともマッチするはずですから、こうした傾向は地域振興の面からも歓迎すべきだと思います。

こうした動きの中では、当然、酒蔵さんは、地元の契約農家を確保することが重要なわけですが、そもそも、農業人口が減っている中、栽培が難しい酒造好適米を作ってくれるところは多くないので、酒蔵自身で米作りも行うところが増えてきています。米作りからこだわりたい!という前向きな部分も、もちろんあるのですが、原料米確保のために、背に腹は変えられないという側面もあるのでしょう。

それと、昨今のオーガニックブームなどもあって、無農薬や有機栽培のお米を原料として使う酒蔵も増加傾向です。

何だか、早く実際の酒造りの工程に進んだ方が興味を持ってもらえそうな気がしてきましたが、次回は「水」をテーマとして取り上げたいと思います。

ブログ・ランキングに参加してます!よろしければクリックお願いします! にほんブログ村 酒ブログ 日本酒・地酒へ
にほんブログ村
日本酒ランキング

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください